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‐2 年連続の TOP100 入りをした AGC 株式会社、東京エレクトロン株式会社、日本たばこ産業株式会社、
株式会社村田製作所に続き、新しくダイキン工業株式会社がランクインしました!

LexisNexis Intellectual Property Solutions (本社:米国、CEO:Andrew Matuch (アンドリュー・マトゥ
ーク))は、本日、「Innovation Momentum 2024: The Global Top 100」のレポートを発表しました。今年で 3
回目となる本レポートは、世界で最もダイナミックなイノベーターが科学技術の進歩にどのように貢献しているかを
特許の価値に基づいた競争力を評価し、過去 2 年間の特許ポートフォリオの変化における勢いの強さを表した
ものです。

特許件数のみに焦点を当てて分析しているレポートとは異なり、特許の競争力に基づいて特許を評価し、イノ
ベーションの状況について貴重なインサイトを提供するとともに、今日の競争市場における価値主導の特許ポー
トフォリオ戦略の重要性を強調しています。

Innovation Momentum 2024:The Global Top 100 は、過去 2 年間の技術開発の勢いと進化を明確に
し、複雑な知的財産権に関する新しい視点を提供しています。企業は、自社の特許技術に関するイノベーショ
ンの成果を同業他社と比較し、公平な視点で最先端技術への投資を評価することで、インサイトを得ることが
できます。

本レポートでは、当社の特許価値分析ソリューション LexisNexis® PatentSight+(TM)の特許評価指標であ
る Technology Relevance(TR)の増分とその方向性を使用して、保有する特許価値の変化を測る独自の
手法で、企業の技術開発力の勢いを確認できます。また、Top 100 社は、企業の特許価値を評価し、小規
模でも高価値のポートフォリオを持つ特許権者や、保有する特許が広範囲で長期間に亘って維持されている
特許権者の特許に重みをつけて算出しています。

Top 100 にランクインした企業で注目すべきは、わずか2社のみランクインした家電メーカーで、HVAC&R(暖
房・換気・および空調)のイノベーションが最も有名な日本企業、ダイキン工業株式会社です。もう1社は、
香港に本社を置く Techtronic で電動工具に注力しています。両社ともアジア圏内の企業で、サステナビリテ
ィを重視しています。

化学品・材料分野では、日本に本社を置く AGC 株式会社が去年に続き2回目の Top 100 にランクインし
ました。この分野の企業が最も多い地域はアジアとヨーロッパで、特にグリーンエネルギーソリューションから高度製
造技術に到るまで、様々な用途にとって極めて重要です。

その他、日本の企業でランクインした企業で言うと、株式会社村田製作所はエレクトロニクス分野でアジアでラ
ンク入りした 4 社の一つで、その他は AsusTek、LG Electric、Samsung でした。東京エレクトロン株式会社
は、セミコンダクターの分野でランクイン、4社あるアジアからの入賞で、他は台湾からの TSMC, Macromix と
MediaTek でした。また、消費財分野では2年連続で日本たばこ産業株式会社がランクインしました。

Key Insights: 

  1. 業界分布: 製薬業界は一貫したイノベーションで首位を維持。半導体は、パンデミックを契機としたデジタル化ニーズに支えられ、力強い成長で2位をキープしている。 
IMR 2024 Industries

<産業別、地域別のイノベーター数の内訳>

  1. 新規参入企業: Appleの新型VR Vision Pro用ガラスを提供するドイツのZEISS社や、HVAC&Rイノベーションにおいてサステナビリティに重点を置く日本のダイキンなど、注目すべき新規参入企業を含む、24の新規参入企業を紹介している。
  1. AIイノベーションの展望: AIイノベーションの展望に触れ、AI開発の最前線にいるNvidiaやJuniperなどの企業を紹介している。Juniperは、Cisco、Huawei、Broadcomから引用される質の高い特許で着実にポートフォリオを増やしており、Hewlett Packard Enterpriseの興味深い買収ターゲットとなっている。 
  1. 知的財産の戦略的意義: 特許ポートフォリオの管理において価値主導のアプローチに移行したIBMのような企業に代表されるように、知的財産の戦略的意義を認めている。
  1. 自律走行の進歩: AptivやTeslaのような企業は、自律走行や自律走行車技術に注力していることで注目されている。Teslaは過去2年間で特許ポートフォリオを約14%増加させ、他のの大手自動車メーカーが幅広く参照する高い価値の特許を開発している。
  1. イノベーターのグローバル分布: 米国企業は医薬品と情報技術に優れ、アジアはエレクトロニクスと半導体で優位を占めている。特筆すべきは、中国と韓国が依然としてアジアの強国であるのに対し、中国本土の企業が昨年の13社からわずか7社に減少した。
  1. 中小企業の役割: Mirati TherapeuticsやSplunkのような中小企業は、その俊敏性とニッチな専門性が評価され、それぞれBristol-Meyers SquibbやCiscoにとって魅力的なM&Aターゲットとなった。
  1. 学術的重点分野: Broad InstituteやMass General Brighamなどの組織がこれらの分野で重要な特許を保有しているほか、学術IT研究におけるデータ分析やAIの重要性が高まっている。

Innovation Momentum 2024: The Global Top 100の全ページダウンロード:

<LexisNexis🄬 PatentSight🄬について > 

本ソリューションは、世界中の特許庁から得られる特許文献データを編集し、1.5億を超える特許文書を備えた全文特許データを英語にして保有しています。国際的な専門家チームが、企業構造、M&A、スピンオフ、社名変更、特許売買取引、さらに自社独自の調査に基づき、最新かつ正確な特許権利者情報を名寄せし、データーベース化しています。高精度なデータクオリティをもとに、学術的に開発された独自の手法であるPatent Asset Index*を使用して特許を評価することが可能です。この手法は、価値の高い特許と重要度の低い特許を区別し、より良い情報に基づいたビジネス判断を可能にするソリューションとして全世界350社以上のお客様に利用されています。                                   

* Patent Asset Index:企業または技術分野全体の革新的な強さを表す指標。 

【報道機関の方からの問い合わせ先】 

レクシスネクシス・ジャパン株式会社 

LexisNexis Intellectual Property Solutions 

広報担当 奥村 

Tel:03-5561-3588  

Email: [email protected]

URL: https://www.lexisnexisip.jp/

LexisNexis Intellectual Property Solutionsは、世界の企業のビジネスイノベーションに明快な情報を提供します。イノベーターが十分な情報を得た上で意思決定を行い、生産性を高め、規制に準拠し、最終的にビジネスの競争優位性を獲得できるよう支援することで、より多くの成果を上げることができるように支援します。弊社のワークフローおよび分析ソリューション(LexisNexis® IP DataDirect、LexisNexis PatentAdvisor®、LexisNexis PatentOptimizer®、LexisNexis® PatentSight®およびLexisNexis TotalPatent One®)により、企業はより効率的かつ効果的に有意義なイノベーションを世界に提供することが可能になりました。私たちは、人類をより良くするために努力しているイノベーターたちを直接サポートし、お役に立てることを誇りに思っています。 

このご案内では、PatentSight+の継続的な機能強化についてご紹介します。PatentSight+とそのコア機能の詳細については、https://www.lexisnexisip.jp/solutions/ip-analytics-and-intelligence/patentsight/ を参照ください。

LexisNexis® PatentSight+ でより高価値な戦略判断を行う

PatentSight+を発表する目的は、3つの重要な分野でお客様の経験を向上させることです。すべてはお客様の意思決定を、かつてなかったレベルまで高めることを目的としています。

  1. Data Quality and Coverage: 厳密にクレンジング、品質チェック、内容を豊富にした複数のデータを組み込むことで、より正確なインサイトを得ていただくことができます。
  2. Actionable Insights: AIを活用した強力な分析機能と独自の指標により、得られるインサイトの深さとスピードが向上します。
  3. Impactful Visualizations and Communication Tools: 訴求力の強いビジュアル・ツールにより、ワークフローを最適化し、効率を高め、知財情報のストーリー性を高めます。

PatentSight+ を正式に発表しました。この時点からさらなる新機能の拡充や継続的な改善を含むアップデートが行われます。

我々のミッションは、お客様がイノベーション活動の最前線に立ち続けるのを支援することです。新しい種類のデータ、分析機能の強化、ワークフローの改善、高度な可視化ツール、コミュニケーション機能の強化がお客様のお役にたつことを望んでいます。

PatentSightのお客様には、PatentSight+の多くの追加機能を無料でご利用いただけます。さらに、サイファーが提供するAI技術分類は、PatentSight+内での追加オプションとしてご利用いただけます。

What’s New

Quick Insights:クイック・インサイト

  • スタート画面にあるガイドに分析のキーワードを入れると、適切な分析テンプレートを推奨。求める結果に素早くアクセスできます。
  • 特許権者、テクノロジークラスター、SDG に重点を置いた検索クエリを入力するだけで、最も適切な分析テンプレートを提案しワークブック上に表します。
  • この機能は、特に初心者や時折分析をするユーザーに適しています

Sheet Navigation & Mangement: シート・ナビゲーションと管理

  • ワークブック内のすべてのシートの概要が表示され、特定のシートをすばやく見つけて移動することができます。
  • 「シートの管理」パネルでワークブックを一元管理し、シートの追加、削除、名前の変更、複製、プレビュー、並べ替え、シートタイトルに基づく検索など、効率的な管理が可能です。シフトキーまたはコントロールキーを押しながらシートを選択すると、複数のシートを一度に並べ替えたり削除したりできます
  • シフト・キーと(お使いのマウス上の)スクロール・ホイールを使うことで、シート・タブの水平スクロールが改善されました。

US Litigation Data:米国訴訟データ

  • 訴訟資料を追加して検索の幅を強化しました。
  • 選択した特許ファミリー、産業、技術分類に関連する米国の裁判例や特許委員会の資料にアクセスできます。
  • 係争中の特許、訴訟名、裁判所、日付、訴訟状況など、主要な特許訴訟の詳細を訴訟表で素早く把握できます。
  • 訴訟事例や関連文書を簡単にダウンロード、閲覧、保存して、勝訴当事者や訴訟の結果を理解し、特許ポートフォリオや訴訟調査を充実させることができます。

Curated SEP Declaration Data powered by IPlytics:キュレーションされたIPlyticsによるSEP宣言データ

  • 標準必須特許(SEP)の状況をより深く理解し、ライセンシング交渉を有利に進めることができます。
  • IPlyticsによるキュレーションデータで、SEPサーチをさらに充実させることができます。
  • IPlyticsによる最も包括的でクラス最高品質のSEPデータで、標準必須の検索オプションから幅広い技術にアクセスすることが可能です。
  • 技術の世代や技術の標準などの高度な検索オプション等、IPlyticsのSEP取り込みプロセスによってキュレーションされた完全なテクノロジー・ランドスケープをご覧いただけます。(有償オプション)
  • WiFi、ビデオコーディングまたはQiテクノロジー世代の検索や、SEPデータの全容を確認することができます。(有償オプション)
  • 特許ファミリーの技術的な関連性を結果リストのSEP詳細で確認することができます。(有償オプション)

PatentSight+: Webinar を12月1日に開催します。

12月1日に開催されるウェビナーでは、PatentSight+の新機能や今後の機能強化についてご紹介します。今すぐお申し込みください!

2024年の導入予定

より高品質で拡張されたデータ

厳密な品質チェックを行い、新しい種類のデータを取り入れることで、お客様により豊かなインサイトを得ていただくことができます。

  • インドなどの1,400万件の文書とデータを追加して特許範囲を拡大
  • 中国などの訴訟範囲と文献の拡大

実用的なインサイト

AI駆動の力強い分析能力により、得られるインサイトの深さとスピードを向上

  • AI分類器ビルダーであるCipherをPatentSight+に搭載
  • 文献レベルの検索と閲覧
  • 訴訟分析とプロセキューション分析
  • SEP分析

効果的なビジュアルとコミュニケーション

訴求力のあるビジュアル化のツールにより、ワークフローを最適化し、効率を高め、知財への認識とストーリー性を高めます

  • チャートタイプが増えてより実用的
  • ワークブック管理の効率化

PatentSight+ で10月からアクセス可能となった機能を紹介します。

チャート類

可視化オプションの追加により、データのストーリー性のコミュニケーションを強化します

Bubble Slices:選んだ次元でバブルの中をスライスして詳細データを見ることができます。

Waterfall:ウォーターフォール(滝)型データの可視化で経時変化を可視化できます。

Additional Lines:1つの折れ線グラフにOwnerやTag等、最大2つの属性を同時に表示できます。

Export to Presentation

ワークブックの図表やデータの静止画像をPowerPointプレゼンテーションに簡単にエクスポートして、同僚やステークホールダーと分析結果を共有できます。

AI技術分類器 (PatentSight+有償オプション)
  1. 技術分野についてのより正確で最新の見解を得る。
  2. 特許ポートフォリオに関する価値の高い戦略的決定を下す。

PatentSight+が皆様の日々の特許分析業務をより効率化し、得られた貴重なインサイトが課題解決に役立つことを願っております

PatentSight+の機能やプラットフォーム全般に関するご質問は、専任のカスタマーサクセス・マネージャーまでお問い合わせください。

新機能を備えたPatentSight+にアクセス

PatentSight+ に興味をもたれましたか?
デモをリクエストして体験してみてください!

旭化成株式会社 代表取締役社長 工藤幸四郎氏

経営と知財、IPランドスケープというツールが非常に密接につながった形で旭化成の事業戦略あるいは経営戦略を研ぎ澄ましていく」旭化成株式会社の工藤社長に経営における知財の役割についてお伺いしました。(2022年10月)

【内容】1.100年以上の歴史を持つ旭化成 2.研究開発とノーベル賞 3.旭化成の今後の成長分野とその選択  4.無形資産の活用 5.無形資産を経営に活かすリーディングカンパニー 6.グローバルに協業する可能性 7.中期経営計画とIP戦略 8.IPランドスケープの展開 9.投資家向けの知財戦略説明会を開いた背景 10.投資家の興味はどこにあったか 11.旭化成におけるSDGs活動について

旭化成株式会社 知財インテリジェンス室 シニアフェロー 中村 栄氏

中村様からIPランドスケープに取り組むのに重要な多くのことを学ばせていただきました。

IPランドスケープ活動を個々の企業の試みだけではなく、日本全体で盛り上げるべく、IPランドスケープ推進のリーダーシップをとっていらっしゃる中村栄氏から、旭化成におけるIPランドスケープ活動の発端、IPランドスケープ推進協議会を発足するに至った経緯、今後の展望などについてお伺いしました。(収録は2022年10月)

【内容】1.中村氏 ご経歴 2.IPランドスケープ推進協議会の発足 3.新しい取り組みを推進していく原動力 4.IPランドスケープに影響した外部要因 5.経営層の意識はどう変わってきたか 6.企業風土にあった導入 7.事業部にはクールな目で見て欲しい 8.お客様についてのインテリジェンス 9.IPインテリジェンス室の業務について 10.IPランドスケープの次のステップ 11.知財インテリジェンス室の人財の育成

戦略的な意思決定を可能にする LexisNexis® PatentSight+が登場!

PatentSight+ は、価値ある戦略的意思決定へのトランスフォーメーションを強力にサポートするために開発されました。11月の正式リリースに先立ち、一足早く皆様にご紹介いたします。

PatentSight+が開発された目的:3つの重要な分野でお客様の活用感を向上させ戦略的意思決定をかつてないレベルに高めることです。

  1. 高品質かつ広範囲なデータ: IPlyticsのSEP宣言データ等を含む、徹底した品質チェックが行われた新しい種類のデータを取り入れることで、より深い洞察が可能となります。またデータの範囲を広げインド等のデータも搭載される予定です。
  2. 実用的な洞察: Cipher(サイファー)の AI 分類器、SEP分析ツール、訴訟状況把握のための分析機能などがお役に立ちます。
  3. 効果的な可視化とコミュニケーション: ワークフローを最適化しながら効率を高め、訴求力のある可視化ツールで知財に関する認識やそれを伝えるコミュニケーションを向上させます。

PatentSight+は11月にリリースされ、それ以降、新機能の拡張や改善を含む継続的なアップデートが提供されます。

我々は、皆様がイノベーションの最前線で活躍することができるよう、今後も新しいデータセット、分析機能の強化、ワークフローの改善、高度な可視化ツールやコミュニケーション力を向上させる機能の強化を順次行ってまいります。

PatentSightのお客様は、PatentSight+の多くの追加機能を一定期間、無料でご利用いただけます。さらに、Cipherが提供する AI 技術分類など、PatentSight+ 内のオプション有償モジュールも提供する予定です。

2023年11月

訴訟データが追加されます
  • 競合他社の訴訟プロファイルとポートフォリオの強さを把握できる。
  • 米国と欧州のデータセットが利用可能で、今後さらに多くの法域のデータが利用可能となる。
  • ポートフォリオのリスク・プロファイルの理解を深めることができる。
IPlytics(アイピーリティクス)による標準必須特許宣言データが利用可能
  • SEP検索と最高クラスのカバレッジ(範囲網)とアップデートから生成された洞察から恩恵をうける。
  • SEP交渉とライセンシングの透明性を高める。
Sheet Navigator (シートナビゲーター)でワークブック管理が容易に
  • ワークブックのシートをより簡単にナビゲートし管理できる新しいシートナビゲータで作業時間を短縮できる。
Quick Insights (クイックインサイト) のインサイト取得時間とクリック数を削減
  • 開始画面での直感的なガイド機能により、価値あるインサイトへのパスウェイを短縮し、分析にすばやく到達できる。検索フィールドに技術用語や企業名を入力するだけで、Quick Insightsが選択したシートをすぐに表示する。この機能は、新規ユーザーや時々利用するユーザーにとって特に有益である。

2024年の予定

より高品質な(拡張)データ

厳密な品質チェックを行い、新しいデータタイプを取り入れることで、より豊かなインサイトを得ることができます。

  • インドなどの1,400万件の文書とデータを追加して特許範囲を拡大
  • 中国などの訴訟範囲と文献の拡大

実用的な洞察

AI駆動の力強い分析能力により、洞察の深さとスピードを向上

  • AI分類器ビルダーであるCipherをPatentSight+に搭載
  • 文献レベルの検索と閲覧
  • 訴訟分析とプロセキューション分析
  • SEP分析

効果的な可視化とコミュニケーション

訴求力のある可視化ツールにより、ワークフローを最適化し、効率を高め、知財への認識とストーリー性を高めます

  • チャートタイプが増えてより実用的
  • ワークブック管理の効率化

PatentSight+ でアクセス可能な新しい機能を紹介します。

新しいチャート

可視化オプションの追加により、データのストーリーテリングを強化します

Bubble Slices:選んだ次元でバブルの中をスライスして詳細データを見ることができます。

Waterfall:ウォーターフォール型データの可視化で経時変化を可視化できます。

Additional Lines:1つの折れ線グラフにOwnerやTag等、最大2つの属性を同時に表示できます。

Export to Presentation

ワークブックの図表やデータの静止画像をPowerPointプレゼンテーションに簡単にエクスポートして、同僚や利害関係者と分析結果を共有できます。

AI技術分類器 (PatentSight+アドオン有償機能)
  1. 技術分野のより正確で最新の見解を得る。
  2. 特許ポートフォリオに関する価値の高い戦略的決定を下す。

PatentSight+が皆様の日々の特許分析業務をより効率的にし、得られた貴重な洞察が課題解決に役立つことを願っております

PatentSight+の機能やプラットフォーム全般に関するご質問は、専任のカスタマーサクセス・マネージャーまでお問い合わせください。

新機能を備えたPatentSight+にアクセス

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IPlytics CTA

Need to Navigate the World of Standard Essential Patents and Standards’ Contributions?

Leverage transparent and accessible data for SEPs, Technical standards, and contribution data analysis to ensure the success of your patent portfolio with LexisNexis® IPlytics.

PatentSight Summit 2023での講演:
PatentSightを用いた特許分析事例~通信技術の世代間比較と次世代技術の先読み

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株式会社レゾナック  知的財産部 インテリジェンスグループ リーダー   増嶌 稔 氏

スペシャリティケミカル企業となった新生レゾナック

 昭和電工と、昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)は、2023年1月1日に統合し、新会社の「株式会社レゾナック」に生まれ変わりました。我々はこれまでの両社の長い歴史に敬意を払いながらも、新社名でのスタートを「第二の創業」と捉えています。

 昭和電工は川上/川中に位置する“材料を作る化学”を中核とした会社であり、昭和電工マテリアルズは川下側の、材料を活用する“混ぜる化学”の会社でした。材料を“作る”から“混ぜる”まで垂直統合されたことで、シナジー効果が発揮しやすくなりました。この統合により、総合化学メーカーから成長性の高いスペシャリティケミカルメーカーに生まれ変わったといえます。

新会社のビジョンはサステナビリティを根幹と位置づけました。「プラットフォーム(経営理念、新人事制度、変革をリードするCXO体制)」を確立させ、「グローバル水準の収益基盤の確立」、「ポートフォリオ経営の高度化」、「イノベーション(技術×ビジネスモデル)」の戦略を推進していきます。

 事業は大きく4つのセグメントにより構成されます。
「半導体・電子材料」では、半導体製造プロセスの前工程から後工程まで幅広い材料を提供しています。電子材料は昭和電工時代からのハードディスクメディアを有しています。「モビリティ」では、樹脂製バックドアモジュール、リチウムイオン電池の負極材などに加え、CASE化に伴う軽量化や電動化にも取り組んでいます。「ケミカル製品」では石油化学、化学品、黒鉛電極が代表的な製品ですが、カーボンニュートラル対応が中心となりつつあり、積極的な技術開発を行っています。「イノベーション材料」では機能性化学品、機能性樹脂、コーティング材料など、事業のイノベーションや競争力強化を支え、技術プラットフォームとなる素材開発に取り組んでいます。

今回の統合に際し、レゾナックは持株会社制へ移行しました。「株式会社レゾナックホールディングス」が持株会社となり、「株式会社レゾナック」を傘下として各事業が移管される形となりました。また経営監督機能はCXOが統括する体制となりました。知的財産部は研究所や研究開発の部署と共にCTO(Chief Technology Officer)直下に配置されています。

統合の実現で、IPLの有効性が認知される

 昭和電工が日立化成の公開買付を発表したのが2019年12月ですが、その少し前から約3年間の中での知的財産部の活動を「M&A検討」「情報共有」「仮想統合」「新生」の4フェーズに分けて説明します。

2019年のM&A実施可否での「M&A検討フェーズ」では、IPランドスケープ(以下IPL)が非常に効果的に活用できました。日立化成の売却可能性が噂された頃、知的財産部ではIPLにより「昭和電工が日立化成を買収した場合、理想的な垂直統合が実現する。」「他社に買収された場合、昭和電工の化学メーカーとしてのポジションで不利になるリスクがある。」というストーリーの資料を作成し、上層部へプレゼンしました。同じタイミングで社内のM&A検討部署でもM&A実施可否を模索している段階だったこともあり、本資料は高い評価を頂きました。その後、本格的にM&A検討段階でも本資料は活用され、さらに肉付けしながらデューデリジェンスを行いました。結果、M&Aによる統合が現実に起こったことで、IPLの有効性は社内に浸透しました。レゾナックでIPLが現在も社内で浸透し、展開できているのは、このM&Aでの成功体験が大きいと感じています。この時IPLが信頼された理由は特許情報の持つ「客観性」と「網羅性」だと考えます。その後もIPLを提供した様々な方から「客観的な他社の技術と動向の両方が手に入る情報は特許だけである」と評価して頂いています。

知財部門同士の統合に向け、互いの特性を知る

 統合決定後には両社間で「情報共有フェーズ」が始まりました。両社の知財部門も統合を進めるにあたり、まずはお互いが何をしているかを知ることから始めました。両社の組織体制は幸い類似していたので、それぞれパテント(出願)、インテリジェンス(情報)、リーガル(渉外/契約)、システム/アドミニストレーション(業務)をメインに担当するチームから3名ずつ代表者を出し、毎週ワーキンググループで情報交換や整理をしました。相手に自分の業務を伝える前に、自分自身がその業務の目的や必要性を改めて考えるため、結果として業務の棚卸しもできる良いきっかけにもなりました。

インテリジェンスのワーキンググループでは、IPLの有効性を検証しました。統合確定後、日立化成側でも昭和電工を対象としたIPLを実施していたため、両社が実施したIPLの結果が正しいか、答え合わせができる良い機会となりました。お互いの事業状況が、IPLの結果でも正しく反映していることが証明され、社内に報告したことで、さらにIPLの信頼性・有用性が社内に浸透しました。昭和電工側の分析では、「両社は技術の重なりが多く、シナジー効果が高い。」という結果を示し、日立化成側の分析では、「製品群の重なりが少ない。」という結果を示しました。二つの結果を合わせて、「技術の重なりは多いが、製品は分散する」、つまり「同じ技術で製品展開は広がる理想的な融合」という結論を示し、報告すると「理想的なシナジー発揮の将来像を表している」と高く評価され、統合をアピールするその年の統合報告書にも掲載されました。

3フェーズ目として「仮想統合フェーズ」がはじまりました。この時期は統合により、社内の各部署でシナジー効果をめざしてプロジェクトが立ち上がり、盛んにディスカッションが行われました。

ディカッションのたたき台に使って頂くため、知的財産部ではIPLの結果を各プロジェクトに提供しました。客観的データをテーブルに広げることでディスカッションがしやすい環境作りができました。IPLの内容は、シナジー効果を発揮すべき期間に分けて、短期に発揮しなければならない短期シナジープロジェクトへは「既存領域のマクロ動向」を、中期シナジープロジェクトへは「市場の顧客分析」「競合分析」を、長期シナジープロジェクトへは「新しい市場に対する新製品・新材料の提案」に関するIPLを実施しています。

実質的CIDとして横断的に企業経営に貢献する

 3つのフェーズを経て、統合を果たした新生レゾナックの知的財産部ですが、基本方針は、昭和電工の特徴である「IPLとAI活用」、昭和電工マテリアル(旧日立化成)の特徴である「知財活用」、その両社の強みを活かした形とし、その活動によって知財ピラミッドの上層である事業や経営戦略への貢献を目指しています。知的財産部の下には、5つの事業軸とインテリジェンスを含む4つの機能軸の合わせて9グループの組織体制となっています。

レゾナックのインテリジェンスグループでは、特許情報に加えて技術文献情報も対象とし、監視、調査、AI活用、IPL、社内教育・セミナーの活動をしています。先述したレゾナックの4つの経営・事業戦略に、実質的CID(Central Intelligence Department)として横断的に貢献しています。

 「グローバル水準基盤の確立」への貢献では、統合のR&D KPIの一つとしてPatentSightのグローバル価値評価を採用しています。縦軸にTechnology Relevance、横軸にMarket Coverageを設定したマップ上で、ベンチマーク企業と比較し図の右上を目指しています。グローバルかつROIの高い優良企業は全て右上に配置されていることが信憑性を高めています。

 サステナビリティ活動の一つとしてPatentSightのSDGS分類も利用しています。新生レゾナックはSDG9とSDG13が高い値となり、事業との親和性も高いことから、社外アピールにも適した結果となりました。

「ポートフォリオ経営の高度化」への貢献では、各事業セグメントや事業状況に沿ったIPLを積極的に活用しています。例えば、コア成長領域では技術トレンド分析、安定収益領域では既存技術の用途探索分析等、種々異なるニーズに合わせ、昨年は100件以上のIPL案件を実施しました。

 「イノベーション(技術×ビジネスモデル)」への貢献では様々な手法を逐次模索しています。用途探索のツールや手法や、将来動向を予測するグラント分析等を検討しています。

 また、現在のIPLはパワーポイントを用いての発表形態が主流の中、いつでもどこでも誰でもデータを見ることができるダッシュボード化の試みも実施しています。作成した資料をダッシュボード化し、開発者自らが深堀ることが可能な仕組みを構築したいと考えています。

 「プラットフォーム」への貢献では、知財関連ツールの整備や知財教育の強化に力を入れています。特許可読性向上システム「ai-PAT」、類似順ソートシステム「ai-SRT」開発等のAI活用の他、監視・調査やセミナー等の活動により、全社に渡る知財マインドを醸成していき、その結果、特許情報に明るい社内風土の構築を目指しています。

成功割合よりも成功回数を重視

 レゾナックがIPLの成果獲得に向けた信念をご紹介します。レゾナックでは、IPLの成果として、成功割合よりも成功回数を重要視しており、「質×量」の向上を目指しています。

 「質」を高める方策として、実践しているのが「失敗に見せないリカバリ力」であり、最初の相手の反応が悪い場合でも、即日修正して持っていき、「満足した」と言われるまで繰り返すのが「成功」の秘訣としています。また、特許情報しか得られない客観性・網羅性をアピールすることに加え、他社の新しい取り組みを積極的に吸収し、実践していくことも大切と考えています。さらには、(社内の)優良顧客の獲得も大切です。カウンターパートとしてIPLを積極的に活用してくれる人、より良い分析手法のための意見を言ってくれる人を大事にしつつ、彼らの求めるIPLを継続的に実施していくことが「質」を高めていくと考えています。

「量」を高める方策の大前提として、レゾナックではIPLの定義を広く捉えて発信しています。経営層向けに限らず、社内の開発者・営業・マーケティング等へも発信する特許分析は全て「IPランドスケープ」として提供し、それによってIPLに好意的な会話が社内に展開されることが狙いになります。その結果、他部署からの推薦で経営層へ報告するチャンスも増えてくるという相乗効果も生じます。さらに、風土づくりやIPLを実施できる人材増も「量」を高めるには重要です。基本的にはOJTで量をこなしながら、分析力とプレゼン力を身に付けていく方針です。

CGCは“目に入る位置への開示”が肝心

 コーポレートガバナンスコード(CGC)に対する取り組みも少し触れさせてください。  

CGCの大目的に照らすと、開示した結果、ESG投資家が投資したくなることが重要であるため、レゾナックでは開示する知財情報の「内容」に加えて、投資家の「目に入る位置に開示すること」に着目しています。

例えば、ESG投資家は、レゾナックの「知財」のWebページよりも、「ESG情報」のWebページを閲覧することが多いと考えられるため、ESG関係の知財情報は、「知財」のWebページよりも、「ESG情報」のページに掲載することにしました。

「ESG情報」のページへの掲載をはじめとする、「企業全体の活動に知財情報を盛り込む」ことは、知的財産部内の調整だけでなく、他部署への折衝や説得が必要になるため、骨の折れる仕事になりますが、着実に成果に結びつくと信じて進めています。

今後に向けて3本目の柱をめざす

 最後に、現在のレゾナックのインテリジェンス活動はIPL、AI活用共に良い方向に進んでいると思います。しかしながら、両活動は始めて既に5年ほど経ち、そろそろさらに3本目の新しい柱の必要も感じています。IPLは非常に良いツールだと思うが、「個人依存度が高い」「一部の方のみへの提供で広げられる規模が大きくない」といった課題もあり、もっと会社全体へ広げていきたい想いがあります。AI活動についても今は効率化の部分のみで、そ
の後は模索中の状況です。

  3本目の柱は、IPLとAI活動を混合したようなものでもよいし、まったく新しいものでもよいと思っています。もし、これについて良いアイデアを持っている方や、ディスカッションをしたいという方がいらっしゃいましたら、ぜひ別途ご相談させ頂きたく、ご連絡頂きたいと思っています。

ご清聴頂きありがとうございました。

ご講演中の増嶌氏

SEP(標準必須特許):
EUのSEP規制とSEPライセンスの課題に関する実証的エビデンス(日本語吹き替え)

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明治ホールディングス株式会社  エグゼクティブフェロー 知財戦略部長      坂元 孝至 氏

利益とESG の両方を追求する企業経営

特許だけでなく、ブランドや商標、マーケティングなどが絡み合って当社の企業経営を支えている。しかしだからこそ、知財情報をきちんと分析し、経営にどう貢献しているかをわかりやすく可視化することが非常に大切だと考える。

まず明治の ROESG 経営Ⓡについて説明する。これは利益(ROE)と ESG を掛け合わせたものを経営の最終目標とする考え方である。目標数字は ROE に ESG の達成度をかけて、そこに「明治らしさの目標」の達成度を反映させて最終的な点数を付けている。明治らしさの目標とは何かと言うと、一例は、タンパク質の摂取量である。今、日本人のタンパク質の摂取量が非常に減って、戦後くらいになっている状況だ。会社としてその是正を啓蒙する意識があってこの目標を設定した。このように当社では単に利益だけでなく、ESG と絡み合って企業を支えているので、そこに知財がどう貢献しているかを、具体例を挙げながら説明したい。

ブランドと特許で守ったロングセラー商品

第一の例はブルガリアヨーグルトである。1970  年に開催された大阪万博で明治の社員がブルガリア館に行き、本場のヨーグルトを食べたことをきっかけに製品化、明治プレーンヨーグルトと銘打って売り出した。しかし当時の日本市場には甘いヨーグルトしかなく、酸味のあるヨーグルトはなかなか売れなかった。そこで社員がブルガリア大使館に日参し、ブルガリアヨーグルトの名を使うことを許可してもらったのが 1973   年のこと。そこから売れ始めたが、それに甘んじず、おいしさや食べやすさを追求し、製法の改良、開発を続け、50 年に渡る主力商品となった。

そうした中で特許も得た。まず「まろやか丹念発酵」である。ヨーグルトの起源は素焼きの壺に入れたミルクに葉が落ち、そこに 2 種類の乳酸菌がつき、それでミルクを発酵         してできたものだ。発酵が低温でゆっくり行われることでなめらかでおいしいものができる。明治では、一一方の乳酸菌がまずは酸素を消費し、その後でもう一方の乳酸菌が働くという乳酸発酵のしくみを解明し、最初から酸素を減らして発酵させる方法を開発した。これにより低温での発酵にもかかわらず発酵の時間も、固まる前処理の時間も短くなり、まろやかでかつ固さもあるヨーグルトができた。以前は砂糖の袋を付けていたが、この製法のおいしさのおかげで砂糖なしで食べられるようになった。この発明は令和    5    年度の全国発明表彰を受賞することになった。

もう一つの特許は「くちどけ芳醇発酵」である。殺菌技術と脂肪の微細化技術を組み合わせることで、脂肪とタンパク質の構造を変え、固さと濃厚さを向上させた

このようにブルガリアヨーグルトは原料をまったく変えず、製法開発でおいしさを高めてきた。それを 50 年間、支えてきたのが知財とブランドだ。まろやか丹念発酵を実現したのは発売の 30 年後である。つまり最初の 30 年には特許はなく、明治のコーポレートブランドとそこに乗ったブルガリアというブランドで守った。しかしそれに安住せず、技術革新を続け、おいしさを継ぎ足してきた。「ブルガリア」というブランドネームが消費者に伝える価値も、最初は「本物」だったかもしれないが、この歩みの中で「おいしさ」、「健康に良い」などへ変わっていったと思う。この商品をブランドや知財がどう支えてきたかを、わかりやすく可視化することで、まだ伝えきれていないものや今後のありかたが見えてくると考えている。

他社との比較、新製品の開発にも知財が貢献

第二は、当社の特許と SDGs との関連を見たときである。パテントサイトの絵はセンスがすばらしいうえ、自社のモニタリングや次の方向性の検討に使えることはもとより、他社と比較して考えることもできる。ダノンやネスレといった海外巨大企業は、SDGs経営で有名であり、圧倒的な特許数、SDG関連特許比率を有する。当社はそれがどのような技術開発の結果なのかを深掘りした。

例えば赤ちゃん用粉ミルクでは、各社で組成が違うほかにも特徴がある。ネスレは性別や月齢別に対応した組成とカプセル方式を組み合わせ、粉ミルクのパーソナライズ化をしている。ダノンは、粉ミルクが製造時に非常に大きなエネルギーを使うことに注目、それを削減できる製造方法を開発している。一方、明治はタブレット化技術で勝負している。こうしたことがわかってきた。

第三の例は、新製品の「ひらけ、カカオ。」である。カカオはチョコレートの原料として知られるが、実はチョコレートに使われるのは、カカオ果実の中の豆のさらに一部で、果実全体の 10%程度でしかない。

そこで当社ではカカオ果実全体をフルーツととらえて活用することをめざした。ピンク色のジュースのようなフラバノールエキスや、餡のようなグラニュールを開発した。チョコレートは細胞を一度破壊してから作ったものだが、これらは細胞を破壊せずに作り、チョコレート味でもない。まだ試験的な販売段階だが、今後、こうした製品を世の中に出していきたい。

こうした開発を強力に後押ししたのが知財解析だ。社長などが出席して技術の方向性を決める会議で、知財部門は、世の中のカカオ関連特許  2000 件を分析、視覚化した図を提出した。そこからわかったことは、カカオ関連技術は、原料関連とチョコレートの加工に集中していて、それ以外の工程が空白であることだ。当時、当社が開発しようとしていた五つくらいの技術を図にプロットすると、この空白部分に入った。さらにそこに特許をプロットしてみると、当社は最終的な加工技術と原料の豆関連の分野を持っていることがわかった。一方、他のチョコレート関連企業は加工技術の方しか持っていない。そこで知財部門は、これなら当社は、カカオ素材すべてを使い尽くすべきプレーヤーになれると進言し、それが反映して数年前から開発が進んできた。これは、知財情報の解析によって必ずしも技術主導だけではなくプロジェクトを後押しできた例だと思う。

知財情報の活用が企業価値向上に寄与する

まとめてみると、ROESG 経営は ROE と ESG のそれぞれを求めて別々に動くのではなく、両方が絡み合って企業価値を向上させていくものである。それには特許だけでなく、ブランドや商標が重要な役割を果たす。しかしこれまで私たちの業界では知財情報はあまり重要視されていなかった。その理由は可視化(見える化)しなかったことにあると思う。今、こういう製品が、こういう価値を伝え、こういう知財で支えられているという実態を、わかりやすく可視化することは非常に重要である。それによって次に打つ手が見えてくるし、投資家に当社製品の今後を理解してもらうためのメッセージにもなる。知財情報は、戦略的知財活動の要であり、知財情報を活用することで企業価値の向上に寄与できるはずだ。

特別に技術オリエンテッドな企業だけでなく、当社のように BtoC で 100 円、200円といった商品を日々販売している企業にとっても、知財情報をきちんと見える化し、それをどのように企業価値向上につなげていくかを考えることは非常に重要だと考えている。

ご講演中の坂元氏

株式会社日立製作所 グローバル知的財産統括本部  知財イノベーション本部 担当本部長 弁理士 比嘉 正人 氏

日立グループ全体という視野から知財活動を推進

 まずIPランドスケープの説明の前段として、日立製作所での知財活動の状況を話したい。当社では事業と連動させた知財活動をめざしている。つまり知財を通じてイノベーションを加速し、事業の成長を支援することである。

 近年、当社はその事業を社会イノベーション事業へとシフトしている。そのため、従来の製品ベースの競争だけでなく、お客様と一緒にビジネスを作っていくといったコラボレーションによる協創が増えている。知財活動もその影響を受け、他社の特許侵害を回避することなどとは別の、新しい視点の知財活動が必要になってきた。

さらに、日立グループは、海外売上高比率、海外の従業員数が共に5割を越えるなど、グローバル企業になった。新しくグループに加わった海外企業にも知財部門があるが、企業文化がまったく異なる場合もあるので、そこに配慮しながら活動のサポートを進めている。

また、グローバルな成長を加速するという現在の経営トップのメッセージに合わせて、新たにCIPO(Chief Intellectual Property Officer)という役職を設けた。ここにシュナイダーエレクトリックの知財部門トップだったスティーブ・マネッタ氏が就任した。それ以降、日本にある日立製作所の知財部門という視点よりももう一段高い視座に立って、日立グループ各社の知財部門を統合した、グループ全体としての方向性を持って知財活動に取り組んでいる。

経営幹部の判断に役立つデータを提供

 近年の知財活動の特色は、ツールや方法が非常に発達してきたことだ。かつては特許情報に対してIPC分類くらいしかできなかったが、今はクラスター分析、価値評価、ヒートマップ、論文とのマッチングなど多様になった。これらにニュース、財務、株式などの情報などを掛け合わせて判断することもできる。さらに時系列変化と特許の総合価値もある。技術分類やベンチマーク分析も即座に取り出すことができる。例えば、TR(技術的指標)に、スタートアップ企業を当てはめてみて、その企業の持つ特許価値を判断し、この企業を買うべきかどうかの判断材料にするといったことが可能になった。さまざまな情報、ツールを集めて社内で試行し、有効かどうかを確かめ、その知識が蓄積されていく。社内事例も増え、できることが増えた。その結果、IPランドスケープが普及したと感じている。

 事例で説明すると、まず、SDGsの視点から見た当社の姿を知りたいと経営幹部から尋ねられたときである。昔であれば、分析のためのIPC分類をどうするか、分析の軸をどう立てるか、というところから始めなくてはならなかった。しかし今はパテントサイトを使えばボタン一つで回答できるので非常に助かっている。今後、こうしたやりかたのバリエーションが増えるとありがたいと思っている。

  もう一つは、当社の中でのIPL分析である。これらの図は環境分野における、「成長性分析」、「技術のポジショニング分析」、そしてこの二つをかけ合わせた、日立の「戦略マトリックス」である。

 成長性分析の図では、特許出願件数の増加率を成長率にして横軸に、ある技術分野の件数を縦軸にした座標に、個々の技術分野を点として配置する。すると4象限の中で右上は、件数も多くかつ増加率が大きい、つまりこれから伸びる分野だとわかる。また技術ポジショニングの図では、日立の特許のシェアの高さを横軸に、企業による技術の寡占度を縦軸にとっている。右上に行くほど、日立のシェアが大きく、かつ他社の新規参入が困難という日立にとってとても良いポジションだとわかる。さらにこれらを使って日立の戦略マトリックスを作り、どの分野を攻めていくかを考えるわけである。日立のポジションが優良でかつ競争の激しい分野に力を入れるのか、日立のポジションは良いが立ち上がりが有望かどうか、などを、事業部門と議論しながら、既存のツールなども使って分析している。

  近年はこうした分析の得意な若手社員も増え、この仕事にのめりこんで、あれもできる、これもできる、といろいろな手法や技術を紹介してくれる。非常にありがたいことなのだが、こうした人材をどのようにうまく活かすかも今後の課題だと感じている。

知財部門は公邸料理人

 これらの事例も踏まえて今後を考えてみたい。私は知財活動を料理に例えて説明するのが好きなので、ここでもそれをしてみたい。料理で食材が増えることは知財のデータ種類の増加、調理用具が増えることは、パテントサイトをはじめとするツールの増加に当たる。料理の腕が上がったことは、増えた情報やツールを使い、組み合わせ、さまざまな分析ができるようになったことに例えられる。

 では目的はどうか。知財活動の目的はPowering Business with IP Data Science、つまりデータ分析を通して事業に貢献することだ。料理だと、日々の食事と、特別な時のレストランなどにおける食事の提供があり、これらは作り手もやりかたも異なる。しかしこの両方を手がける特別な料理人がいる。それが大使館など公邸にいる「公邸料理人」である。大使やその家族に向けた日常の食事と、外交を支援するための、賓客を招いた会食のどちらも手がけ、メニュー作成、買い出し、調理、在庫管理まで担当する。

 私は知財部門の理想の姿はこの公邸料理人に該当すると思う。日常的な体制づくりを行い、ロジスティックスやプランニングをする。単にツールを使いこなし、データを出せばすむ仕事ではない。どのようなタイミングで、誰に、どのようなデータや分析を、どのように見せ、提供するかを考えなくてはならない。専門能力を持つ人材を使うプロデューサー的な能力も求められる。

 例えば、知財にとって、公邸の会食に当たるものの一つが定例会議(知財戦略会議)である。出席する経営幹部の関心事項を考え、どのようなデータを出すのがふさわしいかを考えていく。

 例えば幹部が、CPS(Cyber-Physical System)を一つのキーとして、どの市場を攻めるか決めかねている場合、他のキーをどうするか、候補となる市場はどこか、機会やリスクはどうか、と考えたのがこの図(「CPS関連特許を俯瞰的に分析し、自他社のポジションを確認」)である。縦軸がサイバーとフィジカル、横軸がエンジニアリングチェーン(どのように作るか)からバリューチェーン(どのプロセスで使われるか)に至る技術である。ここにいくつかの企業の特許をプロットすると、グレーの領域では日立は出願している、オレンジの領域では他社の出願が多くて戦いにならない、ブルーの領域ではどの社も出願していないから戦えるかもしれない、といった現状を示すことができる。

 スポット的業務の例としては、設計部の新商品のアイディア創出への支援がある。設計部が環境配慮型製品のアイディアに悩んでいたため、知財部門は、自社の技術、他社の技術だけでなく、似ているが異なる技術分野における特許の出願状況や課題を分析して情報を提供した。これによって、この分野なら、この観点で、このような製品を開発できるのではないか、という発想につながることをめざした。

イメージ図だが、「競合ベンチマーク」が競合他社の動向、「自社技術の棚卸」は自社が持つ技術である。「異分野からの転用」は、似た製造プロセスだが異なる産業分野を上下に並べ、その比較検討などから新しいアイディアを導くことをねらっている。こうした活動は、結果的にはアイディア創出会議の開催につながった。知財部門はこの会議のコントロールもしている。

 このように、知財部門は、単に成果物を出すことにとどまらず、出し方やスケジュール化を含めて考えるようにし、理想に近づけるように活動している。また、公邸料理人にとって大使や賓客への理解と信頼が重要であるのと同じように、知財部門にとって事業部門などへの理解や信頼関係が非常に大切である。個人的には、そのために常日頃からアンテナを張っておくことが重要だと考えている。

ご講演中の比嘉氏

日東電工株式会社 技術知財戦略本部 副本部長  濱崎 豊弘 氏

高機能中間材料メーカーとして事業を拡大・成長

 1918年に設立された当社は、絶縁材料から出発し、粘着剤などの高分子制御技術を基盤技術として蓄積、高機能中間材料メーカーとして事業範囲を広げてきた。現在は情報機能材料、基盤機能材料、ICT、ヒューマンライフソリューションの4事業を推進し、一般消費者などには見えないところで社会を支えている。

 今、当社は、お客様を、直接当社の製品を購入してくださる企業や産業から、社会、人類、地球などへと広げ、持続可能な社会の実現をめざしている。社内で独自に制定したスキームによって、地球環境および人類社会への貢献しているかどうかを認定し、その中で、お客様企業・産業に提供できる製品・事業は何かを考える。重点分野としてはパワー&モビリティ、デジタルインターフェース、ヒューマンライフの三つである。その製品化や事業化に当たっては、三新活動とニッチトップ(戦略、ソリューション、製品)を2本の柱にして推進している。

三新活動とニッチトップで成長牽引

 三新活動は、日東電工の成長エンジンの一つとなってきたものだ。現行の事業から始め、新用途の開拓、新製品の開発、新需要の創造の三つへ発展させていくことで、現行事業全体を拡張する活動を意味する。これにより、中期計画においては新製品比率35%以上を目標に定めた。

 その事例の一つに表面保護剤がある。電気絶縁用ビニールテープの、「しっかりくっつき、きれいにはがせる粘着技術」を、金属製品やスマートフォンの画面表面を保護するテープ、半導体の製造プロセスに使用されるフィルムなど、さまざまな用途、需要、製品へと拡張していった。

 またニッチトップソリューションを創出するグローバルニッチトップ戦略は、経営戦略を示す用語として当社が使い始め、2002年には商標登録もしたもの。ニッチには「隙間」と同時に「生物学的に居心地が良い」という意味がある。当社では後者の意味、つまり、私たちが得意な技術を発揮しやすい場所という意味で使っている。グローバルニッチトップ戦略とは、この居心地の良い場所でのトップを世界規模でめざす戦略である。

新事業モデルを、知財を駆使して守る

 知財部門は、三新活動、グローバルニッチトップ戦略のために、知財活動をしてきた。

知財情報の調査・分析を行うことで、当社が優位性や強みを持つ分野の発見、知財によるその分野への参入障壁の構築、その分野の長期的な維持・拡大、を手がけてきたのである。つまり、私たちにとってはIPランドスケープも三新活動の一環と言える。知財面から三新を分析、出願に際しては、事業モデル、発明の訴求点、事業への特許の活用、などを特許ポートフォリオの中で決める。また特許が不要になった場合、パテントサイトの特許価値評価を判断材料の一つに、放棄や売却の場合も含め、マネタイズする方向で決めていく。

 具体例として、スマホやPCに用いられる液晶ディスプレイ向け偏光板(フィルム)がある。

もともと当社ではこうしたフィルムをモニターやディスプレイのサイズに合わせて切削加工し、顧客であるパネルメーカーに提供していた。パネルメーカーはパネル製造工場で、このフィルムを貼り合わせて使っていた。しかし一枚のフィルムの中にわずかでも欠陥があると製品すべてが不良品となるため、材料の歩留まりが極めて良くないという問題があった。そのためディスプレイ単価が下がるにつれ、状況が悪化することが2007年当時には予想されていた。そこで当社の経営陣は、フィルムを切削・加工した状態でなく、ロール状で供給し、フィルムを張り合わせる装置やラインを顧客のパネル製造工場に組み込んでいただく事業モデル(RTP/Roll to Panel製法)を考え、顧客に提案した。

さらに、経営トップが、このモデルを確立するには知財や特許が不可欠と判断し、知財、開発、製造各部門からメンバーを選出し、専任のチームを組織して、事業モデルの実現に必要な知財網を構築した。

 また、当社の知財部門は特許庁に働きかけ、似たような技術分野をまとめて審査すること(まとめ審査)を提案した。これには特許の審査官にとっても業務効率が向上するメリットがある。特許庁の協力を得てこのまとめ審査を実現、多数の特許の権利化を早期に実現できた(後に特許庁は、まとめ審査制度を公式に作った)。また海外でも早期の権利化が必要という認識から、まだ試験的な取り組みだった審査ハイウェイも、特許庁に対応していただくことができた。

 新しい事業モデルは、経営陣の危機感をきっかけに動き出し、経営、事業、開発、製造、知財が一体となるとともに、それぞれの機能を果たすことで実現できたものである。特に経営層が経営における知財の有効性を感じていたことが大きいと思う。経営層は今も社内会議などで折に触れては、「知財は経営そのもの」と評価してくださっているし、社外にもそう発言している。

 RTP製法による事業は、初期には、多くの特許によって当社が独占的にクローズ化して進めた。これにより、この製法が顧客にとっても欠かせないものになる状況を作り出した。その後ディスプレイの急速なコモディティ化が進み、業界全体で対応する必要が出てきた時点で、特許を当社以外にもライセンスし、市場のパイを広げた。現在RTP製法は、業界で利用される製法として定着している。

収益の谷間を無くすために知財を活用

 事業の持続的な成長のためには、収益の谷間を埋め、無くしていくことが欠かせない。当社は三新活動によって新事業を開拓し、それを実現してきた。それがRTP製法の成功以降はやや変化し、三新活動に知財を適合させることで、従来以上に事業の谷間を無くし、売り上げや営業利益を高めている。

あらためて現在の当社の知財活用の流れを、まとめると以下である。

(1)特許網の構築、(2)他社からの参入障壁を高くしてクローズド戦略を実施、(3)当社がその分野で不可欠な存在となる状況の醸成、(4)製品技術のコモディティ化が始まる前に、他社へ特許網のライセンスを提供するオープン戦略を実施、市場のパイを広げる。これらによって事業の底上げ、事業価値の長期的維持を行う。

さらにテーマ草創期に、どのような事業モデルを作るのか、事業モデルの中でどう将来の知財活用をするか、どのような特許ポートフォリオを作るか、出願の順序をどう設計するか、などを考える必要がある。当社ではこうした活動もすべて、「事業活動に融合した知財活動」だと考えている。

 最後に、当社が知財活動の実行面での変化を付け加えておきたい。従来は発明者と知財の実務者だけが検討して特許出願していたが、これを見直し、開発トップ、ときにはCTOも参加する「知財くるま座」と呼ぶ活動によって、どのような知財網、知財活動をめざすかを議論している。また特定のテーマについて、社外の弁護士や弁理士に参加してもらい、発明者、知財実務担当者と議論する「知財戦略塾」という場も設けた。 

ご講演中の濱崎氏

LexisNexis🄬PatentSight🄬のシミラリティ―・サーチを活用し、無線LAN技術の動向について分析したレポートです。

LexisNexis🄬PatentSight🄬のシミラリティ―・サーチを活用し、全固体電池の技術の動向について分析したレポートです。

代表的な特許1件に基づいてシミラリティ・サーチを活用することにより、調査対象となる技術領域を定義する特許ポートフォリオを作成し、当該特許ポートフォリオに含まれる特許情報(特に千件から十数万程度の特許文献の書誌情報およびPatentSight独自のデータ・指標を含むビッグデータ)を分析する手法について紹介します。