ホーム > 伴走型知財と特許情報活用が、グローバル競争と部門横断連携を支える 伴走型知財と特許情報活用が、グローバル競争と部門横断連携を支える Daikin 導入の目的 技術的に近い特許群を可視化し、ポートフォリオの定義・競合比較・出願強化を同じ指標で議論できる状態をつくるため。 抱えていた課題 IPC分類だけでは空調領域の近接技術を精緻に捉えにくく、領域定義や競合把握に限界があった。 研究・開発やアライアンスの現場に知財がもっと早く入り込む必要があった。 活用サービス LexisNexis® PatentSight+ Summary ● シミラリティ・サーチを起点に、空調領域の近接技術群を「エアコンクラウド」として定義し、ポートフォリオ議論の土台を整えました。 ● スコアと可視化を共通言語に、技術部門・知財・経営層の対話が深まり、出願強化やリソース配分の議論を前倒しで行えるようになった。 ● スコアを目的化せず、「良い特許を生み出すための議論の土台」と位置づけることで、量と質の両立を図った。 ● 今後はAIも活用し、特許情報を「専門家だけのもの」から「全社の意思決定データ」へ広げていく予定。 空調と化学を二本柱に、グローバルで事業を拡大しているダイキン工業にインタビューしました。近年、同社の知財部門では、研究・開発の現場に早い段階から入り込み、技術者と伴走しながら「良い発明・良い特許」を生み出す動きが加速しています。その共通言語として機能しているのがLexisNexis PatentSight+です。シミラリティ・サーチによる技術領域の定義から、スコアや可視化による競合比較、ポートフォリオ強化の議論まで、特許情報を専門家だけのものにとどめず、技術部門や経営層の意思決定につなげる取り組みについて伺いました。 事業成長を支える、知財とR&Dの伴走体制づくりを進める 知的財産部 部長 安部 剛夫 様 まず、ダイキン工業の事業内容と、知財組織の体制について教えてください。 安部部長:ダイキン工業は、空調機器と化学を大きな柱として事業を展開しており、この2事業で売上の約98%を占めています。グローバル売上比率は約85%で、各地域にR&D拠点や生産拠点を構え、地産地消を基本とした事業運営を進めています。 知財機能は本社部門が統括しており、R&Dを統括するテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)側に一定数のメンバーがいます。このほか、空調生産本部や化学事業部、海外拠点にも知財メンバーがおり、本社知財部とTIC他のそれぞれメンバーが日常的に連携しながら世界中の課題に向き合っています。 知財部門として重視しているミッションや、事業・R&Dとの向き合い方を教えてください。 安部部長:基本は、会社が生み出すIPをしっかり守り、事業が継続的に勝てる状態をつくることです。そのうえで、既存の知財活動の枠組みにとらわれず、事業がやりたいことを実現するために知財として何ができるかを考える姿勢を大切にしています。 連携の強化も「組織として連携しましょう」という号令より、人と人が自然にコミュニケーションを取れる状態づくりを重視しています。技術部門からの相談も、かしこまった依頼ではなく日常会話の延長で立ち上がることが多く、知財が早い段階から入り込みやすい土壌になっています。 また、若手人材も増えるなかで、現場との対話を重ねながら育成と業務を結びつけています。技術者と伴走し、発明の磨き込みやポートフォリオ構築、次の戦略検討まで一緒に進める動きを強化しています。 三木田氏:若手としても、いい機会を与えていただいているなと常日頃感じています。 横田氏:今は自分のことよりも、メンバーがどうやったら創造的な仕事ができるようになるのか、ということを心がけています。若手と一緒に仕事できるのは結構刺激的で学ぶことが多いです。 技術領域の明確化と知財の早期関与に向けた基盤づくり PatentSight+導入前は、どのような課題を感じていましたか? 安部部長:2015年にTICができた頃から、R&D部門のKPIをどう設計するかという議論が進んでいました。その際に課題になったのが、空調領域で「技術的に近い特許群」をどう定義するかでした。IPC分類だけで区切ると、言葉の上では近くても、商品との関連性を考慮してみると技術的には異なる特許が混じりやすく、狙った領域をきれいに切り出しにくかったのです。 商品ラインナップが広いぶん、同じ空調分野でもどの技術を見ているのかがばらけやすく、誰がどの近接技術を持っているのか、自社の立ち位置はどこかを見渡しにくいという問題もありました。加えて、発明創出やポートフォリオ強化を進めるには、知財が研究・開発やアライアンスの現場にもっと早く入り込み、面で議論できる状態をつくる必要がありました。 M&Aや出資、共同研究のように、後半でIPが大きく効いてくるテーマでも、「もっと早く声がかかっていれば、できることがあったのに」という問題意識がありました。知財が後追いではなく、上流から伴走できる体制が必要だったのです。 近接特許群の可視化から、技術領域を明確に捉える基盤づくりへ PatentSight+導入のきっかけを教えてください。 安部部長:2016年頃から、種特許を起点に技術的に近い特許群を拾い出し、その中で自社のポジションを見ながらKPIをつくれないか、という議論が進みました。そこで2017年にPatentSightのシミラリティ・サーチを活用し、空調領域の近接特許群を「エアコンクラウド」として定義する取り組みを本格的に進めました。 IPC分類では捉えきれない技術的な近さを見られるのではないかという期待が、導入の大きな後押しになりました。技術グループが出した特許を起点に、近い範囲を抽出できれば競合との比較や自社ポジションの確認がしやすくなり、ポートフォリオ議論の土台がつくれると考えたのです。 導入後は、スコアと可視化が共通言語に テクノロジー イノベーションセンター 戦略室 兼 知的財産部 知財担当課長 齋藤 匡史 様 PatentSight+導入後、どのような変化がありましたか? 齋藤氏:まず、技術領域の定義がしやすくなり、ポートフォリオをどう設計し、どこを強化すべきかを議論する土台が整いました。近年はシミラリティ・サーチによる領域定義に加え、PatentSight+のスコアも活用し、強化が必要な領域を可視化しています。 技術部門・知財・経営層が同じ指標で話せるようになったことで、リソース配分や出願強化の議論も進めやすくなりました。 さらに、知財部門から役に立つ情報を出せることが社内で見えてきたことで、M&Aやアライアンスに関する情報も以前より早く共有されるようになりました。少しずつですが伴走型の知財が浸透しつつあります。 PatentSight+のスコア(特許の価値:PAIや競争力・技術力などを示す指標)は、どのように位置づけていますか? 齋藤氏:スコアを直接KPIにすると、数字遊びになりかねないと考えています。そのため、スコアはあくまで「良い特許を生み出すための議論の土台」として使っています。社内で良い特許だと評価されるものを増やさなければ、外部指標としてのスコアも上がらないという考え方です。 必要な領域には出願を厚くしつつ、不要なものは放棄も含めて見極め、本当に必要な特許にフォーカスすることも重視しています。量と質を両立しながら、結果としてスコアが上がっていく状態を目指しています。 知的財産部(兼)テクノロジー・イノベーションセンター戦略室 副参事 横田 康和 様 特に活用している機能や、社内で評価されている点を教えてください。 齋藤氏:経営層や他部門への説明で特に効果を発揮しているのが、量と質の軌跡を示せるバブルチャートです。 三木田氏:競合比較にも活用しています。数値だけでは伝わりにくい内容を、直感的に理解できる形に変換できることが大きな強みです。 また、トレンドチャートは、「この会社がどの技術に強いのか」「最近どこに力を入れているのか」を短時間で把握するのに役立っています。PatentSight+のスコアの計算式がオープンであることも社内で納得感を得やすく、「スコアといえばPatentSight+」という共通認識につながっています。 横田氏:あとは時系列の表示ができる便利です。以前は自作していてとても時間がかかりました。他事業部と話す際、時間軸で見たらどうなのという質問が必ず出るので、それを容易に表示できるのがとてもありがたいです。 今後はAIも取り込み、特許情報を全社の意思決定データとして推進 テクノロジー・イノベーションセンター テクノロジー・イノベーション室 兼 知的財産部 三木田 ゆみな 様 今後、どのようなテーマに取り組んでいきたいとお考えですか? 齋藤氏:特許情報の活用に関してはポテンシャルがだんだん広がってきていると思ってます。これからは、インテリジェンス系の力をさらに強くし、特許を「取る」「使う」だけでなく、「見る」「データとして活かす」まで一気通貫で事業につなげていきたいと考えています。知財部門だけが扱う専門情報ではなく、技術部門や事業部も日常的に使える意思決定データにしていくことが目指す姿です。 三木田氏:確かに、企業分析を行っていると特許情報から得られるインサイトが多いと感じます。ある企業のことを分析している際に、PatentSight+のチャートを技術者に見せると、技術者の持っている感覚とかなり一致していると感じる瞬間があります。その時に特許分析の可能性をすごく感じ、知財部として戦略にもっと入り込む余地があるんだと感じます。 安部部長:新しい技術を素早く取り込み、誰と組むのがよいのかを見極めるうえでも、知財はますます重要になります。共同研究やアライアンス、M&Aを円滑に進めるために、「舗装道路」を整える役割としても、知財の貢献領域はさらに広がっていくと考えています。 PatentSight+やAIへの期待があれば教えてください。 齋藤氏:検索式の専門性がなくても、AIが壁打ち相手になり、検索結果やマップがリアルタイムに変化するようになれば、特許のとっつきにくさの壁はかなり下がります。特許情報をもっと多くの人が扱えるようになれば、事業部にとっても使いやすいインフラになっていくはずです。 安部部長:将来的には、特許情報にM&Aや市場動向などのビジネス情報も重ね合わせながら、より早く、より実務的なインサイトへたどり着けるプラットフォームへ広がっていくことを期待しています。AIも取り込みながら、特許情報を全社の意思決定に活かせる環境づくりを進めていきたいと考えています。