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多角的な連携が必要な今後のヘルスケア業界において、


H.U.グループホールディングス株式会社


知的財産センター長

導入の目的

特許情報の可視化を進め、研究者や経営層とのコミュニケーションを強化し、知財戦略をより効果的に展開するため

抱えていた課題

  • 知的財産センターが研究の初期段階から関与することが難しく、特許調査の依頼を待つ状態が多かった。
  • 特許情報の分析に手間がかかり、外注では期待する結果が得られないことがあった。
  • 知財戦略の意義について、周囲の理解を得るための活動を始めるきっかけを掴めずいた。

活用サービス

LexisNexis® PatentSight+

Summary

  • ● 研究者とのコミュニケーションが活性化し、研究の初期段階から関与することができた
  • ● 特許情報の可視化が簡便にできるようになり、知財戦略の必要性の説明が効果的に行えるようになった
  • ● 今後はIPランドスケープの定常的な実施とフォーマットの標準化を図る予定

事業の成長に寄与する知的財産センターの構築に取り組む

弊社は主に、検査・関連サービス事業(LTS)、臨床検査薬事業(IVD)、およびヘルスケア関連サービス事業(HS)の3つを展開しています。
検査・関連サービス事業(LTS)はH.U. Bioness Complexという世界最大規模の検査施設を中心として総合的な検査サービスを医療機関等に提供、臨床検査薬事業(IVD)は主に免疫検査試薬の製造と販売、ヘルスケア関連サービス事業(HS)は滅菌関連事業や在宅サービスのアウトソーシングサービス事業などを行っています。

知的財産センターが大きく関わっているのは、臨床検査薬事業と、コーポレートR&D機能を担うH.U.グル ープ中央研究所です。現時点において、特許を出すという観点ではこの2つがほぼ中心です。

検査・関連サービスの事業でも特許出願が無いわけではありませんが、どちらかというと第三者の権利を侵害しないよう配慮する観点で関わっています。また、大規模な検体処理の過程等で得た豊富なノウハウを簡単に開示しないように、知的財産に関するリテラシーの向上を目指した教育も行っています。

臨床検査薬事業のプロジェクトに関しては、アルツハイマー病を中心としたNEURO関連項目の検査試薬開発とCDMO(受託開発製造)を重視し ています。NEURO関連項目の検査については、アルツハイマー治療薬が出始めていることもあって、検査試薬を用いた診断の重要性が高まっており、検査の需要は今後ますます成長していくと考えられています。

CDMOにおいては、パートナーに対して多種多様な抗体を用いた検査試薬を製造・提供することに力を入れていっています。そのため、パートナーが、私たちが開発した検査試薬や原料に関して知財に関する問題を抱えないよう、私たち自身の製品のクリアランスだけでなく、パートナー製品の知財クリアランスにも配慮する必要があります。その点で知的財産センターの役割が大きくなってきています。

新しい技術を発掘して特許出願を行ったり、知財ポートフォリオを構築したりすることはもちろん必要ですが、それに加えて事業の戦略に合った知財活動を行うことが重要だと考えています。

特に今回導入したPatentSight+などを活用しながら、例えば「どのような企業がどのような特許を持っていて、どの分野で成長している のか」など、経営層に対して他社の特許情報や市場の動向を提供することも視野に入れています。

また、当社のH.U.グループ中央研究所では5年先や10年先を見据えた新しい技術の研究も行っています。新たに取り組もうとしている分野において、創出された技術の出願・権利化を効果的に進めることや、他社がどのような状況にあるか、周囲のプレイヤーについての情報を提供することが、私たちの大きな使命であると考えています。また、コーポレートガバナンスコードに対応した知財情報の開示についても検討していく必要があると考えています。

特許情報分析結果の有用性を理解してもらうことの難しさに直面する

研究の初期段階で、知的財産センターが関与する状況を作ることが難しいと感じていました。

研究が進んでくると、FTO目的での特許の調査依頼が出てくるのですが、どちらかというと依頼を待っている状態でした。「もっと早く相談していただければ、こちらからも知財に関する情報を提案できたのに」と思うこともありました。研究開発の方々からすると、私たちに対して頼みにくい状況があったのだと思います。

確かに、研究の初期段階だとどこまで進むか不透明ですし、広範囲にわたる調査だと特許が多数引っかかってしまうので、調査もある程度製品やサービスの仕様が固まっていないと難しいのも事実です。そういう意味で、コンタクトが取りにくい状況があったのかもしれません。

PatentSight+のような分析ツールは使っていませんでした。通常の特許調査を行い、Excelなどで整理して、パテントマップを作成していました。特許の数が膨大になると予想されたときは、外注も行っていました。

ただ、臨床検査薬というニッチかつ専門的な知識を必要とする分野なので、外注しても自分たちが期待する結果が得られないこともありました。

特に、自分たちで行う場合はその都度確認ができるのですが、外注の場合は「これはノイズで、こちらは有効な情報」といった指示が難しくなります。自分たちの意図を理解してもらい、修正してもらうのが難しい。予算の関係もあり、何度も修正をお願いすることもできません。かと言って自分たちで行うと時間がかかるので、その点が課題でした。

経営層も、製品やサービスを保護するという点においては、特許は重要だと認識していますし、他社の特許を侵害しないことの重要性も理解しています。

しかし、特許は保護手段にとどまらず、ビジネスモデルの一部としても機能しています。例えば、CDMOを行う際には「我々はこの特許を持っています」とアピールするためのPRや交渉材料に活用できますし、抗体や検査方法の特許権等をライセンスしたりすることで、ビジネスとしての収益化も図ることができます。

また、他社との協業においても特許は重要な役割を果たすと考えています。

従来の業務にとどまらず、「他社がどのような特許を持っているのか、私たちがどの方向に進むべきか」を考える特許情報分析の戦略的な活用については、まだ十分に理解を得るための活動ができていないと感じています。

「これからの知財戦略のために」という思いで

PatentSight+は他社の統合報告書や発表資料でよく使われていて、グラフの下に「PatentSight」と書かれているのをよく見かけました。それで、ホームページを訪れてまずはトライアルを利用してみようと思いました。

実は、他のツールもいくつか試したのですが、全世界のデータを閲覧できないことや、検索して結果を得るまでに非常に時間がかかる点が気になりました。また、画面の行き来が頻繁に必要だったので扱いづらさを感じることや、費用対効果に納得できないこともありました。

その中でPatentSight+は、国内だけでなく海外のデータも一緒に見られる点や、比較的簡単にさまざまな図表を作成できる点を魅力的に感じたため、使ってみようと思いました。

導入後に十分に活用できない状況になるのではないかという不安がありました。PatentSight+を導入すると、通常業務を行いながら新しい業務もこなすことになります。他社でやられているような専門のチームを作ることは考えていなかったので、今までの業務に加えての負担が大きくなり過ぎないかという点も気になっていました。

それでも、これからの知財戦略のためにやらなければならないという思いが強かったので、トライアルを終えてからすぐに導入を決めました。今までの業務だけではなく、今後は知財の取り組みも重要だと感じていましたので、私が主導して「やろう、やろう」という形で導入を決めました。

使用してみると、様々なことができるようになった実感があります。

まず、「1つのツールでここまでできるとは思わなかった」という声や、研究者が調査している中で「もしかしたらこうなのかもしれない」と予想していたことが、きちんと可視化されたという点がありました。例えば、自分たちがこれから取り組もうとしているテーマについて分析した結果、ある国の特許数が全体的に多く、近年伸びていることがわかりました。なんとなく予想していたことも、そうした情報が明確に示されることが重要だと感じています。

加えて、それらを研究者にフィードバックすることで、特許の活用に関して興味を持ってもらったり、提供したデータに対しても「見やすい」や「わかりやすい」などの良い反応が返ってきたりすることが多いです。

データ分析や活用とは異なる観点かもしれませんが、やはりそうしたコミュニケーションが生まれることによって、メンバーもやりがいを感じている部分が見て取れますね。

また、最初にお話しした課題である上流からの関与が、徐々にですが、できるようになったことはかなり大きいと思います。研究テーマの知財情報分析結果を共有することで、知財からこのような情報提供が可能になのだと理解してもらえるようになりましたし、その結果、「このような研究テーマについて知財的な分析できますか?」といった依頼があり、初期段階から関与しやすくなったことが大きな変化だと考えています。

PatentSight+などを活用してIPランドスケープを行うようになったことも影響していると思いますが、実際、昨年や一昨年から変化を感じています。

例えば検査・関連サービス事業に関して、弊社が日本で大きなシェアを持っているということもあり、これまでは他社からの製品導入に注力していました。しかし最近ではH.U.グループ中央研究所で生まれた技術を検査・関連サービス事業に導入することも積極的に行われています。また、検査・関連サービス事業の経営層にも知財に興味を持っていただけるようになり、知財に関するプレゼンテーションを行う機会が生まれてきたのは大きな変化だと思います。

知的財産センターの人数が増えたためです。会社として従来にも増して知財に力を入れ始めていますが、一度に多くの人を増やすと、業務を教えるのに時間を取られ既存業務に支障が出てきてしまいます。そのため、タイミングを見ながら慎重に増やしているところです。ID数も徐々に増やしていくことになると思います。

理想は、各自にテーマを割り振り、そのテーマ内で適宜自由にPatentSight+を使って分析していくことです。現在は研究部門を対象にしていますが、今後は経営企画部門等にも投資先やM&A候補選定において特許の情報分析を活用していただけるようアプローチしたいと思っています。このようにして知財センターとして関与できる範囲も広がっていくと考えています。


業界を横断した客観的なデータが得られる

実際にPatentSight+を使用しているメンバーに聞いたところ、出願件数の推移がわかるチャートや、カスタムフィールドが重宝されています。技術動向分析を行う際もカスタムフィールドのインポートが容易なので、短時間で元データを入れ替えたマップを作成できる点が使いやすいとのことです。

また、Patent Asset Indexが絶対値で技術分野を超えて比較できる点や、名寄せの機能が優れているため、企業を比較する分析に強みがあるとも聞いています。

ミーティングや研究部門との情報共有サイトで共有しています。特にバブルチャートとパイチャートの組み合わせが好評で、その割合を示す形式が非常にわかりやすいと評価されています。また、経時的なデータを示すことで、過去20年間の変遷を視覚化できる点も良い評価を受けています。競合分析にも活用できますし、今後、様々な技術の分析を行っていくうえで、ますます重要になると思います。

ヘルスケア業界は、もはや一つの会社だけで何かを成し遂げる時代ではありません。例えば、モバイル技術を活用した健康データ管理には、関連企業との協力が不可欠です。そのため、「どの企業とどう組むのが良いのか」を考えることが重要です。

市場や技術動向を踏まえて特許を分析し、他社にとって魅力的で競争力のある特許を戦略的に取得することが、連携を提案する際の説得力につながります。「私たちはこのような特許を持っているから、一緒にやりましょう」と提案できることが、今後の戦略にとって非常に重要です。

特許の状況を把握し、どの企業がどのような活動をしているのかを見極めて、パートナーシップを結ぶべきか、競争相手として注視すべきかを判断する。PatentSight+の利点は、業界を横断した客観的なデータを提供してくれることです。その数値を基に、提携を考えている企業の特許の質を評価し、他により良い選択肢があるのではないかという視点も持ちながら検討できるので、非常に有益に活用できると考えています。

PatentSight+の導入によって研究者とのコミュニケーションが以前より広がったため、今後は対象部署をさらに広げ、さまざまな部署とのコミュニケーションをより気軽に行えるようにしたいと考えています。

また、医療業界におけるAIやIoTの動きも重要です。医療業界は、大きな病院だけでなく中小病院も多いため全体で見るとまだ体制が古く、技術導入が遅れているところもあります。そのため、私たちがAIやIoTを活用して、効率的に依頼を処理し、迅速に結果を返すことに取り組む必要があるのです。

AIやIoTに関する特許も、今後はこの業界でもさらに成長していくと考えています。そのため、AIとPatentSight+を組み合わせた新たな取り組みを進めるほか、メンバーごとに異なっていたIPランドスケープのフォーマットを標準化し、グループ全体でIPランドスケープを定常的に実施していく体制を整えたいと考えています。

検査・関連サービス事業については、特許の活用を検討していく必要性を感じています。実は、この事業に対する競合他社を分析しても、特許出願があまり多く行われていません。しかしそこで、「他社も出願していないから、うちもしなくていい」というメッセージになってしまうのは良くありません。むしろ他社が出願していないからこそ、H.U.グループ中央研究所とも連携し検査・関連サービス事業に関する特許を出願し、優位性を確立していく必要があります。特許を活用して「我々しかできないオンリーワンの検査サービス」を実現していくことを目指しています。

また、私たちの強みは、検査試薬や診断機器を持つ会社と、それらを使用して検査を実施する会社が1つのグループにいることです。グループ内でのシナジーを強めることにより、フィードバックと改良を重ねるサイクルを迅速に回すことで、性能の高い検査試薬を早く作り出すことができます。コロナの際、弊社の検査試薬(抗原定量検査)が世界で最初に承認されて市場に出せたのは、その仕組みがあったからです。

このように検査試薬を製造する会社と、それを使って検査を行う会社が同じグループにいることは大きな強みです。そのため、知財戦略について、個々の事業として考えるのではなく、総合的に考えることが大切だと思っています。