ホーム > 特許価値の可視化を起点に、知財情報を事業・研究開発の判断材料へ 特許価値の可視化を起点に、 知財情報を事業・研究開発の判断材料へ 京セラ株式会社 導入の目的 特許価値を客観的に可視化し、知財情報を事業・研究開発の判断材料として活用するため 抱えていた課題 既存の特許評価指標では、価値の根拠やグローバル比較が見えにくかった。 事業上の重要性と外部から見た客観評価を照らし合わせながら、特許の維持・棚卸しを議論する必要があった。 知財情報を開発・事業判断に役立つ形で共有し、社内活用を広げる必要があった。 活用サービス LexisNexis® PatentSight+ Summary ● 特許価値を客観的に可視化し、事業部ごとのポートフォリオ傾向を把握できるようになった。 ● PatentSight+の指標を社内の特許管理情報と組み合わせ、棚卸し・維持判断に活用している。 ● チームライセンスへ拡大し、知財部門から研究開発・技術者への活用展開を進めている。 セラミックスを起点に、多様な事業を展開する京セラ 法務知的財産本部 IP戦略推進部IPインテリジェンス推進部 調査分析課責任者 富山明俊 様 京セラの事業概要について教えてください。 富山氏:当社は1959年の創業以来、主にセラミックスを中心とした材料を起点に、幅広い事業を展開してきました。セラミックスは硬く、変質しにくいという特長があり、電子部品としても優れた性質を持っています。そこから情報通信、自動車関連、環境エネルギー、医療・ヘルスケアなど、さまざまな事業領域へ広がっていきました。現在の事業は非常に多岐にわたっていますが、セラミックスをはじめとする材料を中心に技術開発を行ってきたことは、現在の京セラの事業にも共通する大きな軸になっていると考えています。 知財部門はどのような体制で構成されていますか。 長田氏:知財部門は、本社(京都)、横浜、鹿児島の大きく3拠点で構成されています。例えば、鹿児島には材料技術の研究所やセラミックス関連の事業部があり、発明が生まれやすい環境があります。そのため、知財部門も現場に近い場所に配置されています。富山氏:発明が生まれる場所の近くに知財担当者がいることで、すぐに相談ができます。生まれた発明について研究開発部門とよくコミュニケーションを取りながら、目的に合った強い権利にしていくことが重要です。横浜ではAIを含む先端的なシステムに関わる研究も行われており、そうした領域でも知財部門が研究側と連携しながら対応しています。 そうした体制の中で、権利化と戦略推進はどのように役割分担されていますか。 長田氏:当社には大きく、知的財産部とIP戦略推進部があります。知的財産部は、主に発明の権利化や出願を担う部門です。一方でIP戦略推進部は、発明の権利化そのものではなく、より上流で事業戦略と融合した知財戦略を策定することに特化した部門です。私たちはIP戦略推進部の中で主に調査分析を担っており、IPランドスケープの手法を活用して、知財情報を開発や事業判断の材料として提供しています。事業部門やR&D部門から相談があった際には、知財部の担当者と連携しながら、必要な情報を調査・分析しています。 PatentSight+によって、特許価値を客観的に見える化 PatentSight+を知ったきっかけと、導入までの経緯を教えてください。 富山氏:2019年にPatentSight+の独自指標であるPatent Asset Index(PAI:特許総価値)という考え方が、他のツールとは少し違うという説明を受け、1カ月間の有償トライアルを行いました。その結果、事業部ごとの特許価値の傾向が明確に可視化され、私たちの感覚とも合っていることが確認できました。社内でも「さらに詳しく見てみたい」という声が上がり、正式導入に至りました。 導入前には、どのような課題がありましたか。 富山氏:以前から、特許の価値を可視化するための指標はいくつかありました。ただ、どのような考え方で評価されているのかが見えにくいものもありました。また、従来は国ごと・出願ごとに特許を見ていたため、グローバル全体で他社と横並びに比較することが難しい面がありました。PatentSight+では、ファミリー単位・ポートフォリオ単位で特許を捉え、他社とも比較できる点が大きな違いだと感じました。 特許ポートフォリオの棚卸しにも活用されていますか。 富山氏:はい。特許は取得後も権利を維持するための費用が継続的に発生します。そのため、すべての特許を同じように維持し続けるのではなく、事業上の重要性と外部から見た客観的な評価を照らし合わせながら、維持の要否を見極めることが重要です。事業部門にとっては、自社事業を守っている、あるいは既存製品に関係しているという観点で重要な特許であっても、第三者からの引用や注目度という観点では違った見え方になることがあります。 そこで、PatentSight+の指標を社内の特許管理システムの情報と結びつけ、特許の価値を確認できる仕組みを作りました。社内で管理している特許リストに、Competitive Impact(CI:特許ファミリーの競争力を示す指標)やTechnology Relevance(TR:技術的価値を示す指標)などを加えることで、客観的な指標をもとに事業部門と議論できるようにしています。客観的な指標が低いからといって、直ちに不要と判断するわけではありません。むしろ、「なぜその特許が事業上重要なのか」を事業部門と改めて確認するための材料になります。このように、PatentSight+は特許ポートフォリオの棚卸しや維持判断にも活用しています。 経営層・事業部門に伝わる知財情報へ 法務知的財産本部IP戦略推進部 IPインテリジェンス推進部責任者 長田恵祐 様 PatentSight+の活用によって、事業部門や経営層への説明は変わりましたか。 長田氏:保有特許の価値の考え方がわかりやすくなったことは大きいです。特にETR(External TechnologyRelevance:外部引用に基づく技術的価値)は、他社がどれだけ自社の特許に注目しているかを示す一つの指標として説明しやすいです。事業部門や経営層に対しても、「第三者の情報を使って客観的に見ています」と説明できるため、理解してもらいやすくなります。 また、PatentSight+ではグラフやマッピングを作成でき、時間の推移をアニメーションで表現することもできます。経営層や上層部に対しては、静止画よりも動きがある方が理解してもらいやすく、伝わりやすいと感じています。従来の分析に比べて、分析の質や説明力が向上し、開発や事業の方向性を検討する上でも貢献できるようになっていると思います。 PatentSight+で特に重宝している機能を教えてください。 富山氏:私が特に重宝しているのは、Reporting Dateの考え方です。会社の過去のある時点で生存していた特許件数を知り、その推移を把握しようとすると、通常は非常に大変です。特許ごとに登録日と放棄や期限切れの日付の両方を参照しながら膨大な件数を遡る必要があるためです。PatentSight+ではReporting Dateを使うことで、そうした推移を比較的簡単に作成できます。過去から現在までのポートフォリオの変化を把握しやすくなる点は非常に便利です。 長田氏:私が重宝しているのは、動きのあるチャートを作成できる点です。自社がどのような立ち位置にいるのか、競合他社がどの方向に動いているのかを説明する際、静止画だけでなく、時間の推移を含めて示せることは非常に有効です。また、Ownerの名寄せも非常にありがたい機能です。子会社を含めたグループ全体の特許を簡単に把握できるため、分析する側として「ここも含めなければならない」と判断する手がかりになります。 知財分析はどのようなテーマで行われていますか。 長田氏:動向調査が多いです。新しいテーマを検討している段階で、その領域の市場や技術、プレイヤーの状況を調査したり、既存事業で競合企業が今後どの方向に向かっているのかを分析したりしています。また、顧客探索にも活用しています。材料や部品など、すでにあるものを他の顧客にも展開できないかという相談が営業部門から来ることがあります。その際、特許情報からヒントになりそうな企業や領域を探し、「このあたりも訪問してみてはどうか」と提案することもあります。 1ライセンスからチームライセンスへ。活用を社内に広げる 導入当初から現在まで、どのように活用範囲を広げてきたのでしょうか。 富山氏:最初は1ライセンスから始まり、その後3ライセンスになり、さらにチームライセンスへと広がっていきました。3ライセンスになったことで、より多くの人の目に触れるようになったと思います。PatentSight+を使って特許の価値を可視化し、それを社内に展開する中で、効果を感じるようになっていきました。当社では、特許件数を増やすこと自体を目的としているわけではありません。全体として件数は大きく増えておらず、事業領域によっては減少している部分もあります。一方で特許の価値は高まっており、質の高いポートフォリオへと変化してきていると感じています。レクシスネクシスのInnovation Momentumや他社の評価でも取り上げられることがあり、その背景の一つにPatentSight+の活用があると感じています。チームライセンスに移行したことは、結果として正解だったと思います。 社内での活用定着に向けて、どのような工夫をされていますか。 長田氏:使い方を理解できた人から、「こういう使い方ができるのか」と気づき、実際に使ってみる。その中で疑問が出てきて、問い合わせにつながる。そういう流れをもっと増やしていきたいと考えています。一方で、利用している方の中にも、まだ使い方が十分にわからないという声があります。社内アンケートでも「もっと使い方を知りたい」という意見があり、今後は私たちもフォローしながら、必要に応じてレクシスネクシスさんにも依頼を考えています。 富山氏:社内で活用が進んでいる部署では、研究開発部門出身で事業部門との連携基盤を持つメンバーが、事業部門から相談を受けた際、PatentSight+でその部署の特許状況を可視化し、使い方まで丁寧に説明するという動きが生まれています。こうした地道な活動が利用者の広がりにつながっていると感じています。 今後、社内展開においてどのような取り組みを進めたいですか。 富山氏:今後は、まず利用頻度の高いユーザーに対して、PatentSight+をさらに使いこなしてもらうことにフォーカスしたいと考えています。ただ、使い方をすべて私たちだけでフォローしていくのは正直なところ負荷がかかります。そのため、どこがわからないのかをもう少し掘り下げたうえで、そこにフォーカスしたセミナーを開催するなどの方法もあると思います。 長田氏:社内に展開していく際には、単に利用者を増やすだけではなく、「どの業務シーンで使うと効果的なのか」「どのように活用すれば判断や議論の質を高められるのか」を、具体的に示していくことが大切だと考えています。そのためには、各部門や各利用者が、自分たちの業務の中でどのようにPatentSight+を活用できるのか、具体的なイメージを持てるようにしていくことが重要だと思います。他社の展開事例や、利用定着に向けた工夫も参考にしながら、当社に合った活用モデルを作っていきたいですね。レクシスネクシスさんには、機能面のサポートに加えて、社内展開や定着化の観点からも、引き続きご支援いただけると大変ありがたいです。 生成AI時代に、知財業務は大きく変わる 生成AIの普及によって、知財業務はどのように変わるとお考えですか。 富山氏:AIによって、知財業務は大きく変わると思います。かつて紙を中心に進めていた知財業務は、各種ツールの導入により大きく変化してきました。AIは、その変化をさらに加速させるものだと思います。今後は、AIに任せられる業務と人が判断すべき業務を整理しながら、知財部門の役割も変化していくと考えています。AIを活用するうえでは、すべてを外部に任せるのか、社内でAIを使いこなせる人材を育てるのかという視点も重要です。いずれにしても、社内にAIをきちんと使える人材がいなければならないと思います。 PatentSight+やAIを活用して、今後どのような知財活動を目指していきたいですか。 富山氏:PatentSight+の活用は、今後さらに広げていきたいと考えています。社内には、すでに積極的に活用しているユーザーがいます。そうした人たちを起点に、活用方法を広げていくことが重要です。また、生成AIによって、PatentSight+の使い方も今後変わっていくと思います。生成AIの活用が進めば、検索や分析のハードルが下がり、知財部門以外の技術者や研究者にもPatentSight+を使いやすくなる可能性があると感じています。 長田氏:今後は、PatentSight+を知財部門だけでなく、技術者や研究開発部門にもさらに使ってもらいたいと考えています。そのためには、使い方のハードルを下げることが重要です。社内展開においては、単にアカウントを配るだけではなく、使い方を理解し、実際の業務に活かせるように支援していく必要があります。レクシスネクシスさんにも協力いただきながら、PatentSight+をより多くの人に活用してもらえるようにしていきたいです。 知財情報を、開発・事業判断の材料として活用する 最後に、京セラにおける今後の知財活動の展望を教えてください。 長田氏:私たちの役割は、知財情報を単なる調査結果にとどめず、経営や事業・開発の意思決定を動かす「判断材料」へと磨き上げることだと考えています。新しいテーマを検討する際の技術動向調査、既存事業における競合分析、顧客探索など、知財情報を活用できる場面は多岐にわたりますが、これからはそこで得られた示唆を現場にとどめず、経営トップにまで届けることに注力していきたいです。今後は、事業部門や研究開発部門との連携をさらに深めながら、知財情報を経営に効く形で提供し、経営判断の場面で「知財の視点」が当たり前に活用される状態の実現に、一歩踏み込んで貢献していく考えです。 富山氏:当社は多様な事業を持つ会社です。その中で、PatentSight+のような客観的な指標を活用することで、事業部門や研究開発部門はもちろん、経営層とも同じ情報を見ながら議論できるようになります。特許価値を数字とグラフで客観的に示せることは、経営の意思決定の場面でも大きな説得力を持つと感じています。また、AIの活用が進むことで、これまで専門性や作業負荷の面で難しかった分析も、より多くの人が扱いやすくなるはずです。今後は、PatentSight+とAIを組み合わせながら、知財情報を経営・事業・研究開発の判断に確実に届く形で提供し、京セラの意思決定に一層貢献していきたいと考えています。